技能実習制度はルールに従って適正に運用を行えば、受入れをする法人、実習生、その双方にとって、非常にメリットの大きい制度です。監理団体のサポートの元、外国人雇用が初めての法人・施設においてはスムーズな受入が進んできました。実習生にとっても、安定した収入を確保しながら介護のスキルを身につけることが可能で、生活や学習についての支援・相談体制も充実しています。
また、介護分野では、介護福祉士合格へのハードルが高く、特定技能の期間、5年間だけでクリアすることは容易ではありません。これが、技能実習制度を入口とすることで、期間が8年間まで延長され、介護福祉士合格や長期就業につながってきました。
ただ、他職種においては、低賃金での就業や人権侵害なども見られ、実習生が失踪する事案も多く起こってきました。その状況を改善するため、技能実習制度の見直しが進められ、2023年11月に最終報告が取りまとめられ、与党提言で一部修正が行われたうえ、2024年3月に閣議決定されました。
<主な変更点>
- 監理団体の要件を厳格化する
- 技能実習と特定技能の連続性を調整する(職種の追加等)
- 一定要件を満たした場合、同一分野内にて転籍(実習先の変更)を認める
- 特定技能制度も適正化を図る
従来の技能実習制度では、原則として3年間は実習先を変更できません。そのことが、人権侵害や失踪を生む大きな理由の一つになってきました。
一方で、受入れ側としては、初年度の受入れ教育に多大な工数をかけたにも関わらず、短期間で転籍されてしまうリスクが発生します。特に地方部では軒並み1年で離脱となるのではないかと不安の声が現在も止むことがありません。
最終的には、「本人の意向による転籍」については、「日本語能力試験N4レベル以上の合格」とともに、「1年超就労後(分野によって2年以下の範囲で延長可)」という形で決定されています。
ただ、介護技能実習生については、そもそもの入国要件として「日本語能力試験N4レベル以上の合格」が求められているため、他分野に比べより転籍のハードルが低くなる可能性があります。
介護分野において転籍がいつから可能かは今後、業界内等での調整が行われて決定していくことが想定されますが、いずれにせよ従来の3年から短縮されることになります。外国人人材を受け入れるにあたっては、『入口の部分でのミスマッチ防止』『就業環境・生活環境』『関係性構築』に注力をすることで、制度で職場に縛り付けるのではなく、「ここで継続して就業したい」と選択してもらえるような取組みが、ますます必要となってきます。
新制度の施行は3年以内、2027年4月までと決定されていますが、激変に対する緩和措置として従来制度で受け入れた技能実習生については、従来の3年ルールが継続される見込みとなっています。
繰り返しになりますが、技能実習制度は厳格に運用を行えば、初めて外国人雇用を進める法人様や、地方に立地する法人様にとって、また就業する技能実習生にとってもメリットの大きな制度です。従来制度での受入れをお考えの場合、最後のチャンスが失われようとしております。
早期に意思決定を行う事で、二期分の採用が可能となるため、2024年度中には採用選考を終え、急ぎ入国手続きを開始されることをお勧めいたします。